ウッドチャックの闇

最近、SNSでウッドチャックをたびたび見かけるようになりました。
2025年7月、アメリカから100匹のウッドチャックが日本へ輸出されました。これらの情報は、2025年5月にマーモット村が誕生し、大きな話題が生まれたときに国内へ入ってきました。僕は、このウッドチャックを輸出したアメリカのブリーダーから直接この話を聞きました。

話を聞くと、日本の多くのペットショップや卸の会社が、アメリカのブリーダーへ直接的・間接的にマーモットを輸入したいという話があったそうです。今回の大量輸出により、多くのペットショップや、ペットショップへの卸を行う会社がウッドチャックを輸入することとなりました。

その結果、いま日本で悲しい出来事が起こっています。
お迎え先が見つからず、半年以上小さなケージに閉じ込められ、ペットショップでセール価格などで販売されている子がいたり、または安かったからと安易にオスとメスのペアでお迎えをし、手に負えなくなったと数ヶ月で引き取り手を探している人がいたりなど…。

こういう子たちを未然に防げるよう、僕はこの情報を初めて聞いたときに、アメリカのブリーダーに日本への輸出を行わず、ウッドチャックの生態が知られているアメリカ国内にとどめることはできないかという相談も行いました。

既に輸出先が決まっている子については、日本のいくつの会社から連絡があり、何匹輸出される予定なのかも聞き取りました。それでも、アメリカのブリーダーは、ペット用に繁殖している以上、販売や輸出を止めることはありませんでした。アメリカ国内では害獣として扱われていることもあり、日本では「マーモット」として知られていて、多くのペットショップが欲しているためです。

不幸なウッドチャックが生まれる前に、未然に防げるよう試みましたが、できることは限られていました。

並行して、マーモット村へ、できる限りのウッドチャックを買い取って引き取ってほしいと強くお願いしました。ご存知の通り、マーモット村では海外で劣悪な環境で育ったマーモットや、怪我をしている子を迎えていることもあり、人員的にも、施設の広さやキャパ的にもとても制約がありました。輸入に当たっての費用や、いまいるマーモットたちの医療費を考えても、経済的にも難しかったです。

その結果、12匹のウッドチャックのみ、マーモット村でお迎えすることができました。
もしこの子たちをお迎えできていなかったら、今でも日本のどこかのペットショップで小さなケージに閉じ込められていたり、繁殖目的や営利目的で飼育しようとする人に安易に迎えられ、飼育放棄されていたかもしれません。

少なくともこの12匹の子たちは、そういった未来にならず、最後まで未来が保証されたことが唯一の救いです。

日本に来た直後は、12匹すべてをマーモット村東京にお願いすることはできなかったため、僕も6匹のみですがお世話を引き受けました。当時は東京に1拠点しかなかったため、毎日朝起きてから夜寝る前まで、家族であるおもちとプク、まもちや、ウッドチャック6匹たちのお世話に明け暮れる毎日でした。

その頃には、手足の指を欠損し、すぐにでも病院にかからなければいけなかったボバクマーモットたちのお世話もしていました。そのため、朝起きたらみんなのトイレ掃除やご飯、庭で遊ばせたり、部屋の中を自由に歩き回らせたり、ひなたぼっこをさせたり、週に数回の動物病院に通ったりと、7月から9月までは精神的にも疲弊していました。

9月には、11月にオープンしたマーモット村大阪ができたこともあり、2ヶ月間お世話をしたウッドチャックやボバクマーモットを引き渡しました。離れる寂しさもありましたが、マーモット村東京でのびのびと過ごしているみんなの表情を知っていたので、スタッフの皆さんへ安心して我が子を託すことができました。いまでは大阪へ行くたびに、みんながよりのびのびとしてくれていて、見るたびに感慨深く感動しています。

マーモット村という保護施設がなければ、この子たちはどうなっていたのかと考えると、みんなを日々見てくれているスタッフさんたちには感謝の気持ちでいっぱいです。マーモットの保護施設と知っていただき、触れ合いがなく展示のみであるにもかかわらず会いに来ていただき、マーモット村を支えてくださっている皆さまにもとても感謝しています。

今は東京と大阪の2つの施設を維持するだけで精一杯ですが、今後はより多くのマーモットの幸せを見据えた僕なりの考えがあります。

今は医療を受けさせるべき子が多くを占めているため、提携動物病院の近くでなければならないという場所の制約がありますが、みんなが健康で元気に過ごせるようになれば、彼らにとってより住みよく、生涯を全うできる場所があるべきです。犬や猫と同様にシニア期にも突入します。10歳前後で高齢になっても展示されたり、不特定多数に触られている子もまだいます。

ドクターマーモットとマーモット村の理念は、世界中のマーモットを幸せにすることです。すぐには難しくても、近い将来、必ず国内外のすべてのマーモットが幸せに暮らせる環境を実現します。これは夢でもなんでもなく、必ず実現させる未来です。この未来が1日でも早く訪れるようにすることが、僕の使命だと思っています。

マーモット村にウッドチャックが来て理解が深まりましたが、ウッドチャックは他のマーモットたちと生態が大きく異なります。

他のマーモットは集団で生きるのに対し、ウッドチャックは集団生活には向きません。もともと一緒に暮らしていた家族であれば問題ありませんが、お迎えする場所が違えば、彼らの縄張り意識も大きく変わります。

さらに、ウッドチャックは他のマーモットと異なり小柄で運動神経も非常に高く、運動量も大きく異なります。

それにも関わらず、「マーモットだから」と大量に輸入され、価格競争によって安くなったウッドチャックを安易にお迎えし、不十分な環境で飼育されている事例も少なくありません。その結果、引き取ってほしいというDMが僕のもとにも届いています。もしかしたら、そのまま山へ飼育放棄された子もいるかもしれません。

今回の日本への大量輸出により、お迎えした会社が飼育環境の大きく異なる他の動物と同じ空間で飼育し、複数匹を不特定多数に触れ合わせるなど、あってはいけないことが起きていると感じています。

マーモットと生活しておきながら、こんなことを言うのはおかしいという意見もあるかもしれませんが、僕はマーモットがペットとして安易に普及することには反対です。ただし、マーモットと暮らすことそのものを否定しているわけではありません。海外ではペット用に飼育・繁殖されたマーモットが存在しているからです。それを否定すれば、この子たちの未来が保証されません。

決して適した環境とは言えなくても、人間からご飯や寝床を与えられ、天敵もいない環境にいた子たちが、いきなり自然に放たれることこそが飼育放棄です。とはいえ、このまま放置していればブリーダーはお金目的で無理な繁殖を続けてしまうため、どこかで規制をしなければなりません。

僕が言いたいのは、私たちはそれぞれの実態を正しく把握し、その状況に応じた判断をしなければならないということです。表面上の情報だけで決めつけ、好き勝手に発言する人もいると思いますが、そういう人たちは本質に向き合っていないため、いずれ離れていき、マーモットの存在すら忘れてしまいます。たとえ否定的な意見であっても、その存在自体には意味があるとも思っています。その意見をきっかけに、本気でマーモットを考える人が増えるからです。

僕の人生のモットーのひとつに「すべてを知らないのに否定することはできない」という考えがあります。否定するのであれば、まず向き合うべきだと思います。もちろん、逆も同じです。

ここからお知らせです。
昨年から、マーモット村へ多くのペット系イベントへの参加協力のお話をいただいていました。僕宛にもイベント参加の依頼がDMでたびたび届いています。

僕もマーモット村も「世界中のマーモットを幸せにすること」を理念にしていることもあり、こうしたお誘いは慎重に検討し、多くをお断りしてきました。理由は、マーモット村の実態や理念が十分に理解されていなかったためです。

しかし、今回の「ペット王国」さんは違いました。マーモットファーストの理念を理解し、そのうえでお声掛けをいただきました。最初はこれまでと同様にお断りを考えていましたが、今回は環境の再現だけでなく、安全性を担保した提案をいただいたため、参加を決断しました。マーモット村に来られたことのある方にとっては、満足できないと感じるかもしれません。

なぜ満足できないかもしれないのに参加するのか。
お金をもらっているのではないかと思われるかもしれませんが、参加にあたってマーモット株式会社が受け取る費用は、運営のための最低限のもののみです。移動費や人件費、環境整備などでほとんどが消えます。

今回参加する一番の理由は、「世界中のマーモットを幸せにするため」です。
これだけマーモットが注目され、イベントで扱われようとしている中で、もしマーモット村が参加しなければどうなるのか。おそらく、営利目的の会社がふれあい目的で参加する可能性があります。その場合、適切な環境が再現されない恐れがあります。人が自由に入れる空間で、慣れていない個体に不特定多数が触れるような状況は、絶対にあってはいけません。

だからこそ、正しい関わり方を示す必要があると考えました。

マーモット村がペット王国に参加するということで気になっている方もいらっしゃるかと思いますが、ぜひ行ってくださいとは言いません。このような場に参加する一番の理由は、業界全体に対してマーモットとの関わり方を示すためです。

長くなってしまいましたが、これからの日本におけるマーモットの未来は、今この瞬間にかかっています。ここで判断を誤れば、他のエキゾチックアニマルと同じ道を辿る可能性があります。

マーモットの魅力を発信する者として、僕には責任があります。
1秒でも早く、世界中のマーモットが幸せに暮らせるように、これからも活動を続けます。今はまだ途中ですが、確実に未来は近づいています。どうかこれからも応援していただけると嬉しいです。

最後に、今年の夏に再びウッドチャックの大量輸出が行われる可能性があると聞いています。マーモット村ではキャパの関係上、すべてを受け入れることはできません。不幸な子が生まれないよう、何か情報があればぜひ教えてください。小さな情報でも、今後の活動の大きな手がかりになります。こういった子たちを未然に防げるように、ブリーダーへの呼びかけや国内でのマーモット飼育に関する考え方を行っていこうと思っています。もちろん、そもそもの本質的な解決についても考えていますが、これについては、また改めてお話できればと思います。

僕の思いやマーモット村の考えが、ひとりでも多くの方に届くことを願っています。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

Back to blog

Leave a comment

Please note, comments need to be approved before they are published.