マーモット村「触れない優しさで、命を守るということ」

マーモット村「触れない優しさで、命を守るということ」

【父の死と、マーモットとの出会い】
僕は、父を突然亡くしました。恩返しをしたいと思っていた矢先のことでした。コロナ禍の最中で、通夜にも葬儀にも立ち会えず、お別れの言葉さえ伝えられませんでした。
家族も自分も心を失ったような日々。
そのとき、SNSで見かけたのがマーモットという生き物でした。どこか父の面影を感じました。人のような表情で、虚無なのに優しく、見ているだけで呼吸が楽になる存在でした。
マーモットに癒されていくうちに、「人の都合で失われてしまう、こんな小さな命を守りたい」と思うようになりました。それが、今の活動のはじまりです。

【マーモット村という場所の意味】
 マーモット村は、世界でいちばんマーモットが幸せに過ごせる場所を目指してつくられています。ここでは、抱っこや触れ合いを禁止しています。なぜなら、触れないことがいちばん優しいことだと知ったからです。

・抱っこや直接接触は禁止
・フラッシュや大きな音、強い香水も禁止
・温度・湿度・食事・日照・運動を個体ごとに管理
・売上は医療・飼育・保護活動の維持に充てられています

これまで僕が監修した商品や書籍、メーカーさんと一緒に作ったぬいぐるみ、靴下、フィギュア、写真集など、それらすべてにおいて、印税やライセンス料など1円も受け取っていません。僕が関わる目的は、マーモットの魅力を広く知ってもらうこと。お金ではなく、「伝えること」と「作品のクオリティを高めること」が自分の役割だと思っています。
一部のメーカーさんからは、商品をマーモット村に寄付していただき、その販売分の売上はすべて医療費・保護費・施設維持費に充てています。
マーモットを通じて利益を得ることは、僕のポリシーに反します。だから、マーモットからお金はもらわない。それが、僕の中の小さなけじめです。
この気持ちを知ったうえで、まもちたちのグッズを手にとってもらえたら嬉しいです。
その商品ひとつひとつが、マーモットを守る力になっています。

【海外で見た現実】
活動を始めてから、中国のブリード施設を訪れました。
そこでは、マーモットが商品や家畜として扱われ、信じられないような光景がありました。
2025年10月のある日。SNSで、マーモットが生きたまま熱湯に入れられ、皮を剥がされる動画を見ました。中国ではマーモットが食用とされる文化があります。文化の違いを否定するつもりはありません。
けれど、あの映像にあったのは文化ではなく、命の冒涜でした。
苦しむ様子を笑いながら撮影し、SNSで拡散する。それは「食文化」ではなく、「命の軽視」です。映像を見て、まもちの顔が浮かびました。そして、父を思い出しました。失った命、守れなかった後悔。スマホを閉じて、海へ行きました。
波を見ながら、考えました。
来る波と戻る波がぶつかると、波は止まります。でも、重なれば足元まで届く。
人の想いも、波のように重なれば遠くまで届く。
同じ方向を見て、足並みをそろえれば、きっと世界は変えられる。

【僕が見てきた小さな命たち】
マーモット村にいる子たちを見てみてください。
人懐っこく甘える子もいれば、臆病で距離をとる子もいます。
手足や指を失った子もいます。向こうでは、そうした子たちは「売れない」「食べ物にもならない」とされ、ご飯すらもらえず、ゴミのように扱われてしまいます。
生後1年を迎えるマーモットはわずか1割。9割はその前に命を落とします。
7月、中国のブリード施設で10匹の赤ちゃんマーモットを見ました。
人間の肩幅ほどの金網のケージに入れられ、その上には大人のマーモットたちのケージ。
赤ちゃんの細い手足が金網の隙間から下に出て、下の大人たちはそれを餌と勘違いして噛みちぎってしまう。3匹の赤ちゃんは手足を失い、出血し、震えながら威嚇をしていました。助けられたのは残りの7匹。
輸出入検疫の手続きを経て、7月に全員を日本へ連れ帰りました。
灼熱の陸路を越え、空輸を経て、1匹も死なせずに守ることができました。

【迎えた7匹と、続いた日々】
東京のマーモット村はスペースも人員も限界でした。
だから僕は、自宅で7匹の世話を始めました。おもち、プク、まもちと一緒に。
朝から晩まで掃除と投薬、週2〜3回の通院。向こうでの環境が悪かったため、ストレスも強く、糞尿の匂いは激しく、最初は近づくだけで警戒されました。
それでも毎日、声をかけ、見守り続けました。やがて、固まって眠っていた子たちが、少しずつお腹を見せて寝るようになりました。それが、僕の救いでした。
でも、1人では十分な愛情を注ぐことはできませんでした。
今も、人間への不信感を持つ子がいます。
だからこそ、マーモット村を訪れる方にお願いがあります。
どうか、温かい目で見守ってください。人間は怖くないんだよ、と優しくおやつを差し出してあげてください。

その積み重ねが、マーモットたちの幸せに変わります。
そして、それが僕にとっての救いでもあります。

【今できること、これからの決意】
僕はこれからも、目の前にいる命をすべて救います。
広さや人員の問題があっても、救わねばならない命があれば迷いません。
もちろん、そうならないための対策も行っています。
パートナー企業への飼育方法の改善依頼、不適切な環境のマーモットの引き取り、密猟・過密飼育・虐待の通報。現地行政と連携し、日々改善を求めています。
それでも、すぐには変わらないのが現実です。
だからこそ、今この瞬間に苦しむ子がいれば、僕は迷わず行動します。
マーモット村は、ただのアニマルカフェではありません。
人と動物の間に「優しさの文化」をつくるための場所です。

【最後に】
マーモットたちは、今日も静かに息づいています。
甘える子もいれば、まだ人を信じきれない子もいる。
でも、確かに、生きています。
そして、海で見たあの日の波のように、みんなの優しさが重なれば、世界はきっと、もう少し穏やかになる。

世界中のマーモットが幸せに暮らせますように。

 

(保護時のカステラちゃんとココアちゃんの様子)

 

(現在のカステラちゃんとココアちゃんの様子)
 

(現在のマーモット村の様子)

 

 

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